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三層絶縁電線の形式試験対照:IEC 62368-1 Annex J、61558-1 Annex K、60601-1 Annex L の試験項目とパラメータ

2026-10-01

1つのトランスが単一の最終用途だけに使われるとは限りません。同じ設計が、IEC 62368-1、IEC 61558-1、IEC 60601-1 への適合を同時に求められることがあります。この3つの規格は、それぞれ1つの規定附属書——Annex J、Annex K、Annex L——で三層絶縁電線(TIW)の形式試験を規定しています。電線選定を担当する安全規格エンジニアにとって、着手前に確認すべきことが2つあります:3つの附属書が要求する「試験項目」は同じ一組なのか?「パラメータ」(動作電圧、ピーク値、周波数)は附属書間で同じなのか?この2点は、電線選定の前に明確にしておくべき前提です。

1. 問題と境界

1つのトランスが単一の最終用途だけに使われるとは限りません。同じ設計が、IEC 62368-1、IEC 61558-1、IEC 60601-1 への適合を同時に求められることがあります。この3つの規格は、それぞれ1つの規定附属書——Annex J、Annex K、Annex L——で三層絶縁電線(TIW)の形式試験を規定しています。電線選定を担当する安全規格エンジニアにとって、着手前に確認すべきことが2つあります:3つの附属書が要求する「試験項目」は同じ一組なのか?「パラメータ」(動作電圧、ピーク値、周波数)は附属書間で同じなのか?この2点は、電線選定の前に明確にしておくべき前提です。

本稿は大晉の4型番 TIW を対象に、「4項目の形式試験 × 3附属書の細分箇条」の対応関係と、「各附属書における型番ごとの評定パラメータ」を、相互に参照できる2つの対照表に整理し、末尾に電線選定の判断基準をまとめます。境界:本稿が扱うのは電線側の形式試験項目とその評定パラメータのみです。完成品/機器全体側のルーチン試験(第6節参照)は、本稿の4項目の電線形式試験の範囲に含まれません。

2. 適用範囲とデータの基準日

  • 規格の版:IEC 62368-1 Annex J、IEC 61558-1 Annex K、IEC 60601-1 Annex L。いずれも各規格の規定附属書です。
  • 評定データ:VDE 40008834。型番ごとの評定結果は Anlage 200 に収録されており、データは 2025-04-25 更新版時点のものです。設計判断にあたっては最新の VDE 証明書を基準としてください。
  • 対象型番:大晉 TLW-B、TLW-BB、TLW-B7S、TLW-F の4型番。
  • 対象外:機器全体側のルーチン試験(第6節参照)、および一次資料の全文を原文どおり入手できていない附属書の条番号(確認待ちの表記参照)。

3. 操作的定義

2つの対照表を正しく読み取るために、本稿で用いる用語の基準を先に固定します:

  • 形式試験(Type test):電線側で一度限り行う定性試験。電線メーカー(大晉)が VDE 40008834 に基づいて一括して評定し、結果は承認書(Approval Document)と VDE 証明書に記録され、機器全体側はそれぞれの附属書に基づいて引用します。
  • 三層絶縁電線(TIW):被試験電線そのもの。
  • 評定パラメータ(動作電圧/ピーク値/周波数):各附属書で型番ごとに評定された際に記録されたパラメータ。具体的な数値は大晉の承認書と VDE 証明書を正としてください。本稿では項目ごとに再掲しません。
  • 「試験項目は同名、パラメータは附属書ごと」:3附属書の4項目の形式試験は名称と細分箇条が一対一で対応しますが、各附属書の動作電圧などのパラメータと適用型番の範囲はそれぞれ別に評定されており、項目が同名だからといって等しくなるわけではありません。
  • 評定範囲:ある型番がある附属書の下で評定対象として記載されているかどうか。記載のないものは表中で「Annex X の評定範囲外」と表記します。
  • 確認待ち:対応する一次資料の全文をまだ原文どおり入手できていないもの。未検証の条番号や名称を記入しないため、一律「〔名称確認待ち〕」または「Annex L 細分箇条 確認待ち」と表記します。

4. 判断の枠組み:2枚の独立した切符

試験「項目」が対応していることは、各附属書のパラメータと型番範囲が同じであることを意味しません。IEC 62368-1 Annex J と IEC 61558-1 Annex K は互いに独立した2枚の切符であり、一方に適合しても自動的に他方に適合することにはなりません。したがって、安全規格エンジニアが電線を選定する際の判断の順序は次のとおりです:

  1. どの経路をたどるか:機器全体に適用されるのはどの規格/附属書か(Annex J/K/L)。
  2. 型番が記載されているか:目的の型番がその附属書の評定範囲に記載されているか。
  3. パラメータが合致するか:その附属書におけるその型番の動作電圧/ピーク値/周波数が設計要求をカバーしているか。
  4. 誰が評定し、どう引用するか:電線の4項目の形式試験は電線メーカー(大晉)が VDE 40008834 に基づいて一括して評定し、承認書と VDE 証明書に記録します。機器全体側はそれぞれの附属書に基づいて引用します。

型番 × 附属書の適用範囲は、当サイトの安全規格経路の解説と一致しています。

5. 対照表

5.1 4項目の形式試験 × Annex J/K/L の細分箇条

IEC 62368-1 Annex J の形式試験(Type tests)の目次は、原文どおり J.2.2 Electric strength、J.2.3 Flexibility and adherence、J.2.4 Heat shock、J.2.5 Retention of electric strength after bending です。IEC 61558-1 Annex K の巻線に対する形式試験は、同じ細分箇条番号で一対一に対応します(J.2.2–J.2.5 = K.2.2–K.2.5)。公式プレビューの目次を原文どおり比較して4項目の対応が成立することを確認しており、そのうち K.2.2 の目次名は Dielectric strength test です。言い換えれば、2つの規格が要求するのは同じ一組の4項目の形式試験であり、各附属書のパラメータと適用型番範囲はそれぞれ別に評定されます。

  • ① — 試験項目(IEC 62368-1 Annex J 目次名):Electric strength;IEC 62368-1 Annex J 細分箇条:J.2.2 Electric strength;IEC 61558-1 Annex K 細分箇条:K.2.2 Dielectric strength test;IEC 60601-1 Annex L 細分箇条:Annex L 細分箇条 確認待ち
  • ② — 試験項目(IEC 62368-1 Annex J 目次名):Flexibility and adherence;IEC 62368-1 Annex J 細分箇条:J.2.3 Flexibility and adherence;IEC 61558-1 Annex K 細分箇条:K.2.3〔名称確認待ち〕;IEC 60601-1 Annex L 細分箇条:Annex L 細分箇条 確認待ち
  • ③ — 試験項目(IEC 62368-1 Annex J 目次名):Heat shock;IEC 62368-1 Annex J 細分箇条:J.2.4 Heat shock;IEC 61558-1 Annex K 細分箇条:K.2.4〔名称確認待ち〕;IEC 60601-1 Annex L 細分箇条:Annex L 細分箇条 確認待ち
  • ④ — 試験項目(IEC 62368-1 Annex J 目次名):Retention of electric strength after bending;IEC 62368-1 Annex J 細分箇条:J.2.5 Retention of electric strength after bending;IEC 61558-1 Annex K 細分箇条:K.2.5〔名称確認待ち〕;IEC 60601-1 Annex L 細分箇条:Annex L 細分箇条 確認待ち

表注:

  • Annex J(62368-1)の4項目の名称、Annex K(61558-1)の細分箇条番号の対応と K.2.2 の名称は、いずれも IEC 公式プレビューの目次から原文どおり取得したものです。K.2.3–K.2.5 の目次名は現時点の一次資料から原文どおり取得できていないため、暫定的に「〔名称確認待ち〕」と表記し、61558-1 Annex K の全文を入手した後に記入します。
  • Annex L(60601-1)の4項目に対応する細分箇条番号は、原文どおり転記できる一次資料の全文がまだないため、一律「Annex L 細分箇条 確認待ち」と表記します。当サイトでは、一次資料で未検証の Annex L 条番号は一切掲載しません。Annex L の評定「結果」(動作電圧などのパラメータ)は、第 5.2 節の VDE 40008834 Anlage 200 による型番ごとの評定をご覧ください。

5.2 各型番 × 附属書の評定範囲

試験項目は一対一で対応しますが、評定パラメータ(動作電圧/ピーク値/周波数)は附属書ごと・型番ごとに別に評定されており、その具体的な数値は大晉の承認書と VDE 証明書を正としてください。下表は、大晉の4型番 TIW の各附属書における評定範囲(どの型番がどの附属書で評定されているか)、認証対象の線径および熱等級を示します。各附属書の耐電圧などの評定パラメータは承認書によるか、営業までお問い合わせください:

  • TLW-B — 認証対象線径(mm):0.10–1.00;Annex J(62368-1):評定範囲に記載あり;Annex K(61558-1):評定範囲に記載あり;Annex L(60601-1):評定範囲外;熱等級:130(B)
  • TLW-BB — 認証対象線径(mm):0.10–1.00;Annex J(62368-1):評定範囲に記載あり;Annex K(61558-1):評定範囲に記載あり;Annex L(60601-1):評定範囲に記載あり(2 MOOP/2 MOPP の2等級);熱等級:130(B)
  • TLW-B7S — 認証対象線径(mm):0.10–0.30(撚線);Annex J(62368-1):評定範囲に記載あり;Annex K(61558-1):評定範囲外;Annex L(60601-1):評定範囲に記載あり(2 MOOP/2 MOPP の2等級);熱等級:130(B)
  • TLW-F — 認証対象線径(mm):0.10–1.00;Annex J(62368-1):評定範囲に記載あり;Annex K(61558-1):評定範囲外;Annex L(60601-1):評定範囲外;熱等級:155(F)

表注:

  • 評定範囲は VDE 40008834 Anlage 200(2025-04-25 更新)によります。各附属書における型番ごとの動作電圧/ピーク値/周波数などの評定パラメータは、一律大晉の承認書と VDE 証明書によります。本表では具体的な数値を再掲しません。
  • 医療用途の経路(Annex L)における 2 MOOP/2 MOPP(操作者保護手段/患者保護手段)の2等級の保護は、TLW-BB と TLW-B7S にのみ紐づいています。TLW-B、TLW-F は Annex L の評定範囲外です。各等級に対応する耐電圧値は承認書によります。
  • 型番 × 附属書の適用範囲(どの型番がどの附属書で評定されているか)は、当サイトの安全規格経路の解説と一致しています。設計判断にあたっては最新の VDE 証明書を基準としてください。
  • TLW-BB と TLW-B7S は、大晉の EIS 電気絶縁システム DJ-130(UL E318181、System Class 130(B))にも収録されています。同システムの採用には大晉発行の Authorization Letter(授権書)が必要です(An Authorization Letter is Required for Adoption of this System)。

6. 機器全体側での引用方法:CB 試験報告書の記載例

電線の4項目の形式試験は、電線メーカー(大晉)が VDE 40008834 に基づいて一括して完了し、承認書と VDE 証明書に記録した後、機器全体側の安全規格報告書で直接引用できます。実務上、機器全体の CB 試験報告書では、IEC 62368-1 Annex J("Insulated winding wires for use without interleaved insulation")に対応する条項について、安全規格試験機関は認定済み(Approved/listed)の TIW をそのまま合格と判定し、追加の電線試験は不要とします。原文の記載例:

「Approved TIW used. See list of critical components. No additional testing considered required.」 ——GlobTek の IEC 62368-1 CB 試験報告書、Annex J 条項

TÜV SÜD が発行した別の CB 試験報告書(Advanced Energy/Artesyn LPS10x-M、Report No. 211-21180290-000)でも、対応する条項に同様に「Approved TIW used」と記載されています。これは、機器全体側が引用しているのが電線の認証範囲であることを示しています。したがって電線選定の際には、機器全体がどの規格/附属書の経路をたどるのか、目的の型番がその附属書の評定範囲に記載されているかを、必ず先に確認してください。

完成品/機器全体側のルーチン試験としての耐電圧試験(Hi-pot)や部分放電(partial discharge)試験などは別の階層に属し、機器全体に適用される規格によって決まります。本表の4項目の電線形式試験の範囲には含まれません。

7. 電線選定の判断基準

安全規格エンジニア向けの結論:

  • 先に経路を決め、次に型番を照合する:機器全体が Annex J/K/L のどれをたどるかを確認し、第 5.2 節に戻って目的の型番がその附属書の評定範囲に記載されているかを調べます。記載のないもの(例:Annex K における TLW-B7S、Annex L における TLW-B/TLW-F)を附属書をまたいで流用してはなりません。
  • 項目が同名でもパラメータが同じとは限らない:4項目の形式試験の名称は一対一で対応しますが、評定パラメータと型番範囲は附属書ごとに照合が必要です(具体的な数値は承認書による)。医療用途の経路には別途 2 MOOP/2 MOPP の区別があり、TLW-BB/TLW-B7S のみが備えています。
  • 引用には証明書類を揃える:機器全体側が電線の認証を引用し、追加の電線試験を省略するための前提は、目的の型番が機器全体のたどる規格/附属書の評定範囲に確かに記載されていること、そして大晉の承認書と VDE 証明書を添付することです。
  • 最新の証明書を基準とする:Anlage 200 のデータは 2025-04-25 時点のものです。設計判断は最新の VDE 証明書を基準としてください。

よくあるご質問

62368-1 Annex J に適合していれば、61558-1 Annex K にも自動的に適合しますか?

いいえ。2つの附属書が要求する4項目の形式試験は一対一で対応しますが、それぞれ別の規格に属し、別々に評定され、型番の対象範囲も別です。大晉を例にとると、TLW-B7S は Annex J の評定範囲に記載されていますが、Annex K の評定範囲外です。機器全体に適用される規格に基づいて個別に確認する必要があります(詳しくは安全規格経路の解説をご覧ください)。

3つの附属書の動作電圧パラメータは同じですか?

項目は同名、パラメータは附属書ごとであり、具体的な数値は承認書によります。評定範囲を例にとると、Annex J と Annex K はいずれも TLW-B/TLW-BB をカバーしますが、Annex L(60601-1)は 2 MOOP/2 MOPP の2等級の保護を別途評定しており、TLW-BB/TLW-B7S にのみ紐づいています——適用型番も各等級の耐電圧値も異なります。具体的な数値は大晉の承認書と VDE 証明書をご確認ください。

機器全体の CB 報告書を作成する際、電線の4項目の形式試験を再試験する必要はありますか?

機器全体側で認定済みの TIW を採用している場合、安全規格報告書の Annex J に対応する条項で電線の認証を直接引用でき、追加の電線試験は不要です(CB 報告書の原文:「No additional testing considered required.」)。前提は、目的の型番が機器全体のたどる規格/附属書の評定範囲に確かに記載されていること、そして大晉の承認書と VDE 証明書を添付することです。

Annex L の細分箇条番号が表で空欄なのはなぜですか?

大晉が現在保有する VDE 40008834 の資料は Anlage 200 のみで(Annex L の評定「結果」は揃っています)、Annex L の各項目に対応する細分箇条の一次資料の全文はまだ入手できていません。未検証の条番号を記入しないため、4項目の対応する細分箇条は一律「Annex L 細分箇条 確認待ち」と表記し、入手後に更新します。

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